■盟三五大切■
あらすじ主人公たちは全て女性たちによって演じられる。
いつの時代も戦争やつまらない諍いはむなしく続き、女たちの嘆きは止む事が無い。こんなにもむなしい物語を女たちは演じてみせる。全ての男たちへ向けて。
プロローグ 夢
1701年、江戸時代の日本を描いた物語である。商業が活発になり、かつて活躍した武士たちの権力は衰え始めていた。各地方で藩士の対立があり物語の主人公である侍、不破数衛門は主人を吉良藩との対立が原因で殺されていた。
彼と彼の仲間たちは浪人(主人のいない侍)となり職を失った。そして彼は薩摩源五兵衛と名前を変え、いつか仲間たちと共に主人の敵討ちをすることを夢見ていた。
しかし彼は、侍であった頃に藩のお金を盗まれていたために、その償いをしなければ忠義の侍として敵討ちに参加することが許されていなかった。
1章 200年前の東京 船の上
1つの船に芸者、小万と妻に稼がせている夫、三五郎が乗っている。三五郎は妻に父親の恩人のために金を作ってくれと頼み込んでいる。
もう一艘の船には源五兵衛。職を失い浪人となった彼は小万に夫がいることを知らず、彼女に恋をしてしまう。
2章 源五兵衛の家
源五兵衛は芸者の小万に惚れこみ、全財産を使い果たしてしまう。家は空っぽ。忠義の侍となるために集めていたお金もまだ半分しか返していない。家来の八右衛門が武士としての生き様をお忘れだと訴えても、聞き入れない。
3章 偽りの恋
小万が芸者仲間とやって来る。腕に刺青を入れ、源五兵衛への恋の証を示す。偽りの刺青だと知らず、小万への思いを激しく募らせる源五兵衛。
4章 忠義のための金、100両
源五兵衛の伯父が現れ、忠義の侍の隊に加われるようと100両を融通する。源五兵衛が立派な侍であった頃の部下たちも、源五兵衛が忠義の侍の隊に加われるように職業を変えてお金を集めている。
5章 芸者の店
三五郎は源五兵衛が手に入れた金(100両)を騙し取るために仲間たちと芝居をする。源五兵衛は騙され、忠義の侍になるための金を小万のために使ってしまう。八右衛門に連れらてやってきた伯父は怒り狂い、源五兵衛を勘当する。
6章 三五郎と仲間たちの家
騙されたことを知った源五兵衛は、恨みを晴らすために、小万と三五郎と仲間たちが暮らす家に忍び込む。そして2人と間違えて5人を殺してしまう。小万と三五郎はなんとか逃げ出す。
7章 貧民街にある幽霊の住む家
源五兵衛は行方知れず。家を追い出された八右衛門は一人で貧民街に越してくる。しかしそこには幽霊が出る。怖くなって八右衛門はこの家を出る。
8章 三五郎と小万の引越し
夫婦も新居を探して、この幽霊屋敷に越して来る。この家の家主は小万の兄であった。
そこに三五郎の父がやって来る。彼の父はかつての主人、数右衛門のために坊主になり、お金を集めていた。三五郎は父のために作った金(それはつまり源五兵衛から騙し取った100両)を渡す。喜んで帰っていく父。
源五兵衛が2人を追ってやってくる。毒入りの酒で2人を殺すつもりであったが、逆に警察に追い詰められてしまう。そこへ八右衛門が現れ、5人を殺した犯人は自分だと言う。八右衛門は源五兵衛が立派な忠義の侍となることを願って身代わりに死刑となる。
9章 幽霊騒ぎ
夜、夫婦の家に幽霊が出る。捕まえてみると実は家主である小万の兄であった。彼は幽霊が出ると言って住人を追い出し、家賃ばかりを騙し取って暮らしていた。父の主人、数右衛門から金を盗んだ犯人もこの兄であった。三五郎は、義兄が持つ敵の家の設計図を手に入れるために義兄を殺してしまう。
そこへ三五郎の父が現れ、三五郎をかくまい、設計図を持って、2人で主人の数右衛門のもとへ向かう。三五郎は父の主人である数右衛門に会った事が無く顔を知らない。
10章 小万殺し
忠義の侍になることを願って死んでいった八右衛門や自分のためにお金を作ってくれた部下たちのために、敵討ちの兵隊に入ろうと決心したが、どうしても自分を騙した憎い夫婦が許せない源五兵衛。彼は再び夫婦の家を訪ね2人を殺して自分も死のうと考える。そして小万を惨殺する。
11章 源五兵衛(本名は数右衛門)の隠れる寺
寺で小万の首と食事をする源五兵衛。この寺の坊主が帰ってきて、息子が用意した敵の家の地図とお金を渡そうとするが、源五兵衛は、人殺しの自分にはその資格がないと受け取ろうとしない。源五兵衛は三五郎が自分のためにお金を必要としていたことを知らず、小万と仲間たちを殺してしまった。三五郎は源五兵衛が父の主人、数右衛門であったことを知らず、お金を騙し取った。
罪は全て自分たちが引受けるから、どうか忠義の侍となって仇討ちの兵隊に参加してくれと願う三五郎親子。
エピローグ 忠義の侍
100両と敵の家の地図を持ち、敵討ちの兵に加わる源五兵衛。彼が侍としての運命を全うするために、多くの人間の命が失われた。100両の金が全ての原因であった。