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12人の怒れる男たち本多劇場 |
出演:大谷亮介 保村大和 小川輝晃 関 秀人 海津義孝 さとうこうじ 小村裕次郎 里美和彦 竹内大介 倉持健吾 阪本篤篤 塩野谷正幸 / 観世榮夫【特別出演】
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昼2:00 |
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夜7:00 |
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※14日(月)、15日(火)は特別料金で前売当日共に3500円
★11日(金)、17日(木)終演後、作家・演出家・出演者らによるアフタートークあり。
あらすじ
「あなたも人を殺してみませんか?」
あの『戦場委員会』がふたたび動きだした。
ここは東京のとある地下道。
コンクリートは茶色く変色し、所々水が筋をつくって流れている。時折聞こえるのは、地下鉄の走る音……。
戦前から残るこの地下道に、『戦場委員会』は男たちを召集した。
どぶ鼠のようにうずくまるこの男たちに出した『戦場委員会』の新たな指令とは……?
劇評
国際貢献の名の下で参戦国化がもくろまれ、憲法第九条が踏みにじられる状況が進む中で、社会の閉塞感が偏在する現状を激しく痛快にえがいた作品であった。
アングラ演劇の復権を掲げ、ダイナミックに役者の身体的演技を引きだし、観客を挑発しつつラジカルなテーマを現前化するのに定評のある流山児祥の演出であった。
作者の鐘下辰男は、旧日本軍を題材に日本人の原型を探る数々の秀作を発表してきた。『ベクター』『出撃』『ポプコン・ネイビー』や『国粋主義者のための戦争寓話』など、リアルな歴史観に支えられながらメタファに満ちた作品である。また朝鮮独立闘争の義士安重根を主人公とした『寒花』では日朝の国境を超えた人間像に迫る視点を提示した。
(中略)
前作の「戦場委員会」の実際の騒乱計画が実行され、その破綻いや隠された陰謀が明らかになる。登場人物は前作と同じ老人(観世榮夫)と十二人の若者たち。この十二人の構成は前作と異なり、実戦部隊らしい指揮官―隊員のヒエラルキーが確立している。また前作のディスカッション・ドラマの面は後景に引き、激烈な身体的所作が舞台狭しと展開された。
前方客席をいくつか取り払って設けられた傾斜舞台が前方にのび、その両サイドにも客席。東京の地下にはりめぐらされているというコンクリート壁に囲まれた旧日本軍の作った地下道の一個所。
老人が作業服姿で地下道を掃除しながらつぶやくように語る。「言葉、言葉、言葉……言葉でなにが解決されたか……我々は話し合いの時代を終らせるために生まれた。話し合う時代から行動する時代へ……」と。
「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」と年金加入問題で小泉首相が国会で開き直った言葉に象徴される「言葉の軽さ」が際立つ昨今。彼の特権的地位利用の表明がこんな言葉で糊塗されてしまうとは。「言葉よりは行動!」とは、いくら短絡的ではあれ、現在の閉塞感を突破しようとする“ある雰囲気”を伝えるものである。
一人の男の笛を合図に十人の薄汚れた迷彩服を着た若者たちがナイフを手に戦闘訓練をくりひろげる。一ヶ月に亘ってドブ鼠のようにくり返された訓練。五人ずつ二分隊に分かれてデパートを占拠し、一般市民を人質にとり、天皇と人質交換を要求し、天皇暗殺を計画していると語られる。
戦場委員会は“市民・人道・慈愛・正義・道徳・憲法・真実・言論”などの既存価値を「敵」とし、肉体を武器としてその転覆を図る組織であることが明らかにされる。
若者たちは「あなたも人を殺してみませんか-戦場委員会」との新聞広告に応募した若者たちで、元傭兵、元自衛隊員、元ジャーナリストのほか二人の少年も加わっている。
劇中に語られる「いいか、この国にも立派な戦場がある。どこだ?学校だ。まさに今や学校は戦場だ」の台詞とともに、この二人の少年が劇の後半大活躍するのには驚き。少年の一人の「さとうこうじ」という短身異能の役者が老人役の観世榮夫の存在感と共に印象的。
(中略)
地下に転がる十三人の男たち。言葉のむなしさの果ての「行動」が、よりむなしい結末を迎えたことを、一見荒唐無稽な物語の中に批判的寓意的に表現された。
密室のような空間の中に展開された悪夢または妄想のようであり、意外とこの国の未来を予見しているのではとハッとさせられる。
(村井秀美 進歩と改革2004年8月号)